2シーターだけがフェラーリでしょうか?答えは「NO」です。
0-100km/hを4.2秒で駆け抜け、最高速は315km/hを誇る、そのクルマの名は612スカリエッティです。
伸びやかで美しく仕立てられたそのスタイリングを担当したのは、当時ピニンファリーナに在籍した奥山清行氏です。その他、エンツォやクワトロポルテなど、数々の名車を生み出してきた彼にとっての代表作の一つでもあります。
先代の456から全長、全幅、全高と全ての範囲が拡大され、ボディーサイズは大きくなったものの、軽量なオールアルミスペースフレームの恩恵により車重は同等以下に抑えられています。エンジンはより低く、後方にマウントされたため、適正な重量配分を実現しています。540馬力を発生させるV12気筒を搭載し、暴力的な加速で4人の搭乗者全員をフェラーリ・ワールドへ誘います。その心臓部は、当時のフラッグシップモデル575Mのエンジンを吸排気系中心に見直し、25馬力の出力向上を実現しています。もちろん、リア・シートもフロント・シート後部の空いている隙間に詰め込んでいる訳ではありません。狭くなりがちな頭上や足元の空間を確保し、しっかりハイエンドGTカーとして相応しい居住性能も兼ね備えており、ハイウェイを快適かつ超高速で移動することを実現しています。ただし、フェラーリたる所以、ホールド性を重視した作りになっており、身体の大きい人は身動きが取り辛いかもしれません。
もしもあなたがこのクルマにホールド性を全く求めないのならば、きっと他の選択肢を選んだ方が良いでしょう。これはフェラーリなのですから。しかし、フェラーリに荷物を積んで、長距離旅行に行くのはまさに男のロマンです。お家芸であるV12の咆哮をBGMに、贅沢すぎるそのドライブは、もはや旅のメインに成り得るでしょう。