国産エンジン史スポーツカーその18「280馬力自主規制を作ったVG30DETT」

国産エンジン史スポーツカー編その18は、GT-RのRB26DETTとほぼ同時に登場したVG30DETTです。


280馬力自主規制の先駆け

CCライセンス 表示Nissan 300ZX by FotoSleuth

現在では「そんな話もあったか」と過去の記憶になりつつある「280馬力自主規制」。

国産車の過激な高性能化、それに比例するように増大した交通事故に歯止めをかけるべく、自工会(日本自動車工業会)に加盟する自動車メーカー各社が運輸省(現在の国土交通省)に申し出たものです。

2004年まで続いた自主規制は今や過去のものとなり、現在では日産 GT-Rのように500馬力、600馬力のクルマも国産車メーカーから販売されていますが、そのキッカケを作ったのが日産でした。

1989年、Z32型フェアレディZのVG30DETT搭載モデル、前回紹介したBNR32型スカイラインGT-RのRB26DETT搭載モデル、そして4.5リッターV8のVH45DEを搭載した初代インフィニティQ45が相次いで300馬力モデルとして開発されます。

トヨタ7M-GTなどとの大排気量ハイパワーエンジン競争の中で優位に立つべく、メーカーとしては当然の事でしたが、そこで運輸省から「待った」がかかったのでした。

その先駆けとなったのが、3台の中でもっとも早くデビューしたフェアレディZと、その搭載エンジンVG30DETTです。

「本命」の決定版VG30DETT

前回紹介した通り、当時の日産が考えていた新世代エンジンの本命はV型6気筒のVGエンジン、そして軽量コンパクトなVGに置き換わるまでの過渡期のエンジンとしてL型の生産設備を利用して生産されたのがRBエンジンでした。

「Very Good」を略して命名されたVGエンジンはフロントに搭載すれば短いエンジン長から縦置きFR用エンジンとして前後重心を車体中央に近くできましたし、コンパクトなので横置きFF用エンジンとしても使用可能。

そして、ミッドシップスポーツ用エンジンとしても最適だったのです。

その当初からZ31型フェアレディZ用エンジンとしても使われ、3リッターV6DOHCターボ、255馬力のVG30DETは初代日産 シーマに搭載、高級セダンでありながら爆発的な加速力を発揮して「シーマ現象」と呼ばれる大ヒットを記録しました。

その決定版としてツインターボ化、当初300馬力、自主規制で280馬力エンジンとして、発売当時の国産最強エンジンだったのがVG30DETTです。

幻のスーパースポーツ、MID4-II

CCライセンス 表示NISSAN MID4-II.(1987) by MIKI Yoshihito. (#mikiyoshihito)

しかしこのVG30DETT、元からZ32フェアレディZ用に開発されたわけではありません。

本来は1985年に発表されたミッドシップ4WDスーパースポーツのMID4(VG30DE搭載)、その発展型として1987年に発表されたMID4-IIのエンジンとして世に出ました。

NAで230馬力を発揮するVG30DEを横置きに搭載していたMID4と異なり、ツインターボ化したVG30DETTを縦置きに搭載した、本格ミッドシップスポーツ、MID4-II。

後にアテーサE-TSに発展する電子制御式4WDシステムと、日産スポーツの代名詞となる4WSシステム、スーパーHICASを搭載し、いわば後のR32スカイラインGT-RとZ32フェアレディZの性格を併せ持ったようなクルマでした。

コンセプトカーとして発表されたものの、市販車として発売可能なクオリティと完成度を実現しており、メディア向けの試乗会まで発表でも絶賛されましたが、結局当時の日産で取り扱うレベルを超えていると判断され、市販される事は無かったのです。

実現していれば、ホンダ NSXより早く「日本初のスーパーカー」になる可能性もありました。

Z32専用エンジンとして、無為の時を過ごす

CCライセンス 表示Nissan 300ZX by FotoSleuth

結局、VG30DETTは1989年にZ32フェアレディZに搭載されてデビューし、「280馬力自主規制の先駆け」となりました。

しかし華々しかったのはそこまでで、グループAレースで活躍し、チューニングベースとしても高い評価を受けて市場に受け入れられたのは、RB26DETTを搭載したスカイラインGT-Rでした。

タービン交換やブーストアップだけでいとも簡単に高性能を達成できたRB26DETTはスポーツ走行用のエンジンとして絶賛されます。

フェアレディZが北米以外であまりレースに使われなかった事や、低迷した販売台数、そして日産自身の経営悪化により、ローレルと共通部分の多い量産セダンとして作られたスカイラインはともかく、専用設計スポーツカーのZをモデルチェンジする余力が無かったのです。

その結果、ビッグマイナーチェンジすら無くズルズルと10年以上も作り続けられた、Z32フェアレディZ専用エンジンとして陳腐化してしまいました。

VG自体も1994年には次世代のVQエンジンが登場しましたが、エンジンルームに余裕の無いZ32に搭載される事は無く、最後は「時代遅れの古臭いエンジン」となりながら、2000年のZ32生産終了と共に姿を消しています。


RB26DETTをはじめ、RBエンジンが現在まで現役のチューニングベースとして人気を誇るのに対し、VG30DETTエンジンを頂点とするVGでチューニングを極めようとする人はほとんどいません。

後継のVQが今度こそ「本命」として日産の主力エンジンとなりましたが、VGはすっかり忘れ去られているのでは無いでしょうか?

次回は1980年代後半に登場した2リッター直4スポーツエンジン代表、三菱4G63を紹介します。

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