超小型車の時代その12・実証実験進む超小型モビリティ、普及の壁は?

遅々として進まない超小型モビリティの実情

ここまで当シリーズでは過去・現在・国内外の超小型車を紹介してきましたが、その間に「超小型モビリティ」について、何らかの進展があったかというと厳しいと言わざるを得ません。
そもそも「超小型モビリティ」は2012年4月、国土交通省が自動二輪車(いわゆるオートバイ)と軽自動車の中間にあたる車種として、道路運送車両法で新しく定義する事を検討した事が始まりでした。
既にその当時は日産 ニューモビリティーコンセプトやトヨタ コムスが実際に公道を走行する実証実験を行っており、軽自動車登録で使う事自体には問題無かったのです。
しかし、その当時メディアで取り上げられ、「早ければあと3年ほどで超小型モビリティが街のあちこちを走るようになる」とまで持ち上げられたものの、2016年8月現在、未だに実証実験レベルにとどまっています。
「超小型モビリティ」の実現、そして普及の壁となっているものは何でしょうか?

コストパフォーマンスの問題

超小型モビリティは先に書いたように「自動二輪車以上、軽自動車以下」のクルマです。
そのため、軽自動車に対し価格や税制面でのアドバンテージが無ければ普及が見込めません。
しかし現状で市販されているトヨタ コムスの例で挙げれば最低価格は687,085円(税込)から。
軽トラですと例えばダイハツ ハイゼットは599,400円なので明らかに安くて荷物ははるかに積めます。
いやいや乗用車で比べないと…というのであれば、スズキのアルトバンなら696,600円からと、ほとんど変わらず4人乗りで窓もドアもあり。
もちろん購入時の諸経費や毎年の税金、車検代などで実際にはコムスの方がトータルではそれなりに安くなりますが、「その程度ならちょっとお金を出せばちゃんとしたクルマが買える」のも事実です。
せめて40万円代、できれば30万円代にならないと、安い軽自動車には勝てないでしょう。

意外に深い駐車場の問題

また、駐車場の問題が意外と大きなものとなります。
国土交通省のガイドラインを見れば、「超小型モビリティなら駐車スペースは少なくて済む」となっており、それは事実です。
しかし、現実には超小型モビリティでないと駐車できないような駐車場は、そうそう存在しません。
大抵の駐車場は最低でも軽自動車を止められる程度のスペースが確保されており、超小型モビリティ向けの駐車場はある程度普及が進まないと、好んで整備しようという駐車場オーナーはいないでしょう。
かといって、駐輪場に停めるには大きすぎますし、路上駐車をして許されるわけでもありません。
歩道に止めるなどもってのほかですから、せっかくの超小型モビリティでも、結局は普通のクルマと同じ駐車場で、同じ駐車料金を払わなくてはいけません。
そもそも都市部では駐車場の数さえ十分ではないので、駐車場を探しているうちに、結局バスか電車で来ても変わらないほど目的地から遠い場所に止めざるをえないケースもあるでしょう。
となれば、一番威力を発揮しそうな都心部の移動手段としては、よほど細い路地などで無いと意味が無さそうです。
また、立体式の駐車場では急なスロープを登るだけの登坂性能が不足していたりと、これも都心部で使うのにはかなりネックになります。

充電場所の問題

ほとんどの超小型車はEV(電気自動車)になると予想され、そうなると充電が必要です。
これも都心部では今でこそそれなりに充電スタンドが増え、数は足りているように思えますが、今後EVやPHV(プラグインハイブリッド車)が増えてくると、スタンド待ちでかなり時間を食う事が予想されます。
3~5分程度で給油を終えられるガソリン車やディーゼル車と違い、EVは最低でも20分程度の充電時間を要するので、例えば充電スタンドつき駐車場が完備されたスーパーなど商業施設で買い物をしている間に充電をする、などの設備が無いと、使うのが難しくなるでしょう。
自宅に充電設備をつけるというのも、例えばアパート暮らしで月極駐車場に止めているというケースではどうにもなりません。
取り外せてキャスター付きでゴロゴロ転がせるバッテリーでもあれば良いのかもしれませんが、これも2階建て、3階建てのアパートでエレベーターも無いと、階段を上り下りするのも大変で、高齢者の移動用途としては難しいものがあります。

結局は地方向け?

そうした諸々を考えると、ハッキリ言ってしまえば都心部の個人用移動手段としては軽自動車に対する優位性がありません。
交通網が発達している東京都心部など大都市部であれば、公共交通機関の方がよほど手軽でしょう。
可能性がああるとすれば、大都市でも公共交通機関が乏しいクルマ社会の町、あるいは地方での集落間移動という事になりますが、それだと普及のための台数が確保できず、産業として成立しにくくなります。
国土交通省としても「移動手段」として目をつけたはいいものの、「駐車」や「充電」といった、実際の運用につきもののハードルについての見識が不足気味だったようで、最近では観光客向けの見世物に近い実証実験が増えている印象です。
実際に普及させようと思った場合、宅地開発の段階から「超小型モビリティで町内の用事が済める街」のような構想を行い、まちづくり段階から手をつけるしか無いのではないでしょうか。
かつて鉄道の私鉄が沿線開発とセットで発展したのと同じような発想で、再開発とパッケージした普及活動が必要で、国土交通省単体では超小型モビリティは難しいのではないか、実現するとしてもデリバリーバイクの代替程度になってしまうのではないか、現状からはそう見えます。


いかがでしたか?
現実に「超小型モビリティというジャンルを作り出し、普及する」という構想には、大きな壁がある事が実情です。
軽自動車がオーバースペックだというなら、再び360ccの「軽自動車二種」のようなものを作る方が、まだ簡単では無いでしょうか。
しかし、そのような壁がある事を認識しつつ、現実よりで他の新構想との合わせ技で超小型モビリティを実現しようという動きもあります。
次回はそのひとつ「超小型モビリティでのカーシェアリング」をご紹介します。


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