現在のBMWに残された、数少ない直6エンジンN55B30A
ひところのBMWでは「スモールシックス」と言われた2~2.5リッター、「ビッグシックス」と言われた2.5~3.5リッター2系列の直列6気筒エンジンと、その末裔がありました。 SOHCから始まったビッグシックスはDOHC化され、スモールシックスは直列4気筒ターボエンジンに置き換えられて無くなってしまいましたが、それでも2017年現在、3リッター直6DOHCターボエンジンがまだ残されています。 BMWのエンジンは今やほとんど直列4気筒かV8エンジン、最廉価モデルに至っては1.5リッター直列3気筒DOHCターボエンジンですから、もはや、いつ「直3エンジンを2つくっつけてV6エンジンを作ろう」と考えてもおかしくありません。 というより、MINIやミニバンの2シリーズツアラー系、SUVのX1のような横置きエンジンFF車のBMWが登場している以上、時間の問題と言っていいでしょう。 (直6エンジンを横置きするボルボのようなメーカーもありますが) それでも直列6気筒エンジンは今やBMWのアイデンティティのようなところがありますし、7シリーズのM760Liのように、まだV12エンジン搭載車がある限り、BMW直6エンジンは続くと思います。
ツインターボN54B30Aの後継はシングルターボN55B30A
既に次世代のB58B30へ更新が進んでいるとはいえ、実際に今走っているBMW車の多くに搭載されている3リッターターボがN55B30Aです。 先代のN54B30Aは直噴ツインターボでしたが、ツインターボには重量問題でもあったのか、後継のN55B30Aでは小型ツインターボから大型シングルターボへと変更されています。 また、N54B30Aでは輸出先の国での排ガス規制やガソリンの種類に応じて、直噴エンジンかバルブトロニック(BMWの可変バルブ機構)を使い分けていましたが、N55B30Aでは直噴+バルブトロニックになりました。 バルブトロニックはトヨタも「バルブマチック」として採用している、吸気バルブに無段階リフト制御でスロットルの役目を果たさせる方式。 トヨタでは補助的にスロットルバルブも残しており、BMWも当初同様でしたが、現在は完全にスロットルバルブを廃止しています。 1シリーズ(135i)から7シリーズ(740i / 740Li)まで多くのBMW車に搭載され、特に最小最軽量でハイパワー版N55B30Aが搭載されたM135iは、BMW車でもっとも気持ちの良い車と好評を得ました。
最新のシルキーシックスはB58B30A
しかし、そんなN55B30Aも既に次世代に移行しています。 それが新世代Bシリーズの直列6気筒版B58A30Aです。 BMWの最新エンジン最適理論では「1気筒あたり500ccが最適」とみなされており、それに合わせて500cc×3で3気筒1.5リッターのB38、500×4で4気筒2リッターのB48、500×6で6気筒B58エンジンを作っています。 まだ登場していませんが、いずれV型8気筒4リッターや、V型12気筒6リッターエンジンも現れるでしょう。 そこで何のメリットがあるかと言えばピストンなどパーツの共用化で、コストダウンを図りつつ全体のクオリティを底上げする狙いがあるようです。 つまり3気筒から12気筒まで同じクオリティのエンジンを目指すわけですが、B58B30Aではそうしたコストダウンだけではなく、しっかりパワーアップ。 BMW車の数字は下2桁がかつては排気量、ターボ化されてからは「その排気量に相当」する数字が入っていますが、M135iはM140iへ、2シリーズもM235iからM240iへと数字が大きく、つまり3.5リッター相当から4リッター相当へとパワーアップしました。 その結果、両車の最高出力は340馬力、ハイパフォーマンス版の「Mモデル」、M2では370馬力に達しています。 確かに自然吸気エンジン時代の滑らかな吹け上がり(シルキーシックス)では無いかもしれませんが、それでもBMW伝統の直6エンジンは健在かつ、最新のエンジンこそ最高!そう言って良いでしょう。