マツダの野望「ユーノス、アンフィニ、オートザム」

トヨタのようになりたかったマツダ

現在のマツダは「マツダ系」と「マツダアンフィニ系」の2系統の販売網を持っていますが、トヨタのように「どちらかでしか買えない車がある」というわけではなく、実質的には1系統です。 それでもなぜ2つの販売網が今でも存在するかと言えば、過去に性格の違う2つの販売網を持っていた名残に過ぎません。 実際、かつてはマツダオート店としてスポーツカーを中心に販売していたマツダアンフィニ系の販売店は減りつつあり、いずれマツダ系に完全集約される可能性もあります。 車種整理も進んで少ない車種を同メーカー別系列店舗同士で張り合っても仕方が無いので、効率的に販売していくには当然のことなのです。 しかし、バブル時代の頃には膨大な車種ラインナップを整備し、それを数多くの系列店でその特色を生かした販売を行い、日本国内で大いに売り上げを伸ばそうとした時期がありました。 それもマツダ車を売るというより、各系列で独立したブランドと車名で、少しずつ特徴の異なる車を売りさばこうというのです。

マツダ・アンフィニ・ユーノス・オートザム・オートラマ

1980年代後半にバブル景気が始まった時、マツダには一つの懸念がありました。 現在でも昔のイメージの名残から特定の自動車メーカーを毛嫌いする人がいますが、当時はホンダ、マツダ、スバルなどはそのブランドイメージが芳しくなかったのです。 それぞれ情熱的なファンはいたものの、いざ実用的な乗用車となるとトヨタと日産の二強体制で、それ以外のメーカーはファンが中古車を買ってくれる同メーカー系のディーラー以外では、マトモに下取りもしてくれないとすら言われていた時期でした。 今思うとおかしな話ですが、ともかく当時はそういう時代です。 マツダは販売台数を伸ばそうと思えば、「マツダ以外のブランドで評価を上げるしかない」と考え、新たなブランド構築と、それらの販売網を別々にして、それぞれで販売台数を増加させれば、結果的にマツダ製の車がたくさん売れると考えました。 そこで以下の5チャンネル(系列)体制を1989年に立ち上げます。 ・マツダ店:従来からのマツダブランド車 ・アンフィニ店:既存のマツダオート店を改称し、高級スポーツ路線のアンフィニ車 ・ユーノス店:ヨーロピアンテイストのユーノス車を販売する新設ブランド ・オートザム店:軽自動車やコンパクトカーを中心とする新設ブランド ・オートラマ店:既存のフォードブランド販売店(フォード車とマツダ製フォードブランド車を販売) これらの店舗では、オートラマ店で販売するフォード車や、ユーノス店で販売するシトロエン車、オートザム店で販売するイタリアのランチア車を除けば、マツダ製でもマツダの名を冠さず、それぞれのブランド名を冠につけて販売されました。 (代表的な例が、ユーノス ロードスター)

粗製乱造クロノスシリーズの悲劇

しかし、その結果は散々なものでした。 5チャンネル体制に供給する車は、例えばマツダ ファミリアアスティナとユーノス 100などエンブレム以外はほぼ共通の車もありましたが、その多くが車体を変えデザインを変えエンジンを変え、といった調子です。 つまり、短期間に車種が激増し、似たような車でも内装やエンジンが違うなど、微妙に異なる車を作るハメになったのです。 結果、品質の低下でユーザーからの評価が異常に低く、「結局マツダ車じゃないか」という批判と偏見の増長を加速させる結果になりました。 特にひどかったのがクロノス・シリーズで、同じプラットフォームから以下の似たような車が作られています。

中でもユーノス 500のように高い評価を受けたものもあれば、アンフィニ MX-6のように大不評だったものまであり、さらには新しいブランド、新しい車名の知名度も上がらずただ販売台数が分散しただけでした。 さらに、上記姉妹車全てを合わせて月間販売台数が1万台に届かないという体たらくで、他車種もおおむね似たような状況にあり、失敗を認めたマツダは早くも1990年代半ばまでにはそれぞれの「店じまい」を始めたのです。

幻の「アマティ」ブランドと、その後

5チャンネル化に失敗したマツダでしたが、同時に海外でもレクサス(トヨタ)やインフィニティ(日産)、アキュラ(ホンダ)に続く独自高級ブランド「アマティ」を立ち上げる計画でした。 アマティは日本では展開せず、アマティ車はユーノスブランドで販売する予定でしたが、その前に5チャンネル体制が瞬殺されてしまったので実現せずに終わります。 結局、数年もたずに各ブランド独自車種とブランド自体の整理を行い、5チャンネル時代に生まれた車種で1990年代末まで残ったのは、ロードスターとミレーニア(旧ユーノス 800)くらいだったのです。 ユーノスはアンフィニと統合してマツダアンフィニへ、オートザム店はマツダオートザム店として残ったものの2016年で事実上廃止、オートラマ店はフォードが直轄するフォード店へと変わり、今やマツダアンフィニ店にその名残を残すくらいになりました。 さらにマツダの販売低迷は続いて地域ディーラーの廃業やマツダ本体もフォード傘下で立て直しを図るなど、1996年にデビューしたデミオのヒットで辛うじて自動車メーカーとしての命脈を繋いでいます。 今の若い人だと、年配の人が初代ロードスターのことを「ユーノス」と呼ぶ理由がわからない人も多いかもしれませんね。

こうしてユーノスもアンフィニもオートザムも無くなってしまいましたが、マツダは1970年代のオイルショックによる危機に続き、今回もどうにか生き延びました。 これでよく潰れないものだと感心するほどしぶといマツダですが、その陰には消えていったブランドがあったことを、覚えておいた方がいいでしょう。 次回は、「ベビー・ロールス」と言われた名車、プリンセスを作ったことで日本でも著名な、イギリスのバンデン・プラをご紹介します。

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