日本輸入自動車史その9「バブル時代の輸入車ブーム(1)」

日本輸入自動車史その9は、輸入車が一気に花開いたバブル時代です。


輸入車の常識を変えたバブル時代

1980年代前半までの「輸入車」。
それは一部のお金持ちであったり、怖い人の乗り物というイメージでした。

ポルシェのオーナーズクラブが休日には群れをなしてツーリングされている光景が目撃されたり。
メルセデス・ベンツやBMWを見かければ、お金持ちやその筋の人だろうと言われるのが当たり前だったのです。

インターネットで簡単に情報が集まる時代でもありませんでしたから、そうした「先入観」が大事な時代で、輸入車ディーラーもそうした「特別な人たち」を相手にしていれば良いようなものでした。

一般人のクルマ観と言えば、部長以上がクラウン、課長がマークII、係長がコロナで主任や平社員はカローラに乗るのが当たり前。

クルマという買い物ひとつとっても、下層の人間が目上の人より高いクルマを買うなどとんでも無いという、今から考えると信じられない世界だったのでした。

そうした空気は地方だと1990年代も終わろうとする頃まで残っていて、筆者が勤めていた会社では転勤してきた若いやり手課長が中古のベンツに乗ってきただけで、営業所長が「なんだアイツは!」と大騒ぎする、そんな時代も昔はあったのです。

それが1980年代後半に起きた「バブル景気」で一変しました。
程度の差こそあれ、使えるお金が急激に増え、それまでのように「身分で買うものを決める時代」では無くなったのです。

時代を捉えた「小ベンツ」

そんな中、輸入車の流れを決定的に変えたのが、メルセデス・ベンツW201型、広く知られる名称では「ベンツ190E」です。

1982年のデビュー後、1985年から日本に導入された190Eは、それまでのメルセデス・ベンツ車と大きく異なっていました。

まずその小ささ!5ナンバーサイズに収まるボディに2リッターエンジンを搭載し、5ナンバー登録ができたのです。

今でこそコンパクトカーでも3ナンバーは珍しくありませんが、当時は3ナンバー車の自動車税が高く、庶民が普通に所有・維持できるようなものではありませんでした。

そこに手頃なサイズでやってきた190Eは、奇跡的に「日本で販売されるらめに生まれるようなクルマ」だったのです。

バブル景気も相まって190Eは飛ぶように売れ、「小ベンツ」「赤坂のサニー」などと言われたものの、小さいとは言えクオリティは高級車のメルセデス・ベンツそのものの質実剛健さでしたから、これをキッカケに「輸入車はイイ!」という時代が始まりました。

そして、それを支えたのが全国に広がるヤナセのディ-ラー網です。
まさしく、いつかメルセデス・ベンツが大ヒットする事を見越したように作り上げられたネットワークによって、メルセデス・ベンツは輸入車の代表的存在になったのでした。

躍進した「六本木カローラ」BMW

躍進したのはヤナセが扱うメルセデス・ベンツだけではなく、BMWもでした。

それほど大規模ではない輸入代理店を通して日本で販売していたBMW車を大々的に売り込むべく、1981年に代理店を買収してBMWジャパン(ビー・エム・ダブリュー株式会社)を設立、3シリーズを中心に日本での販売に力を入れていたのです。

BMWもまたこの時期に1.8リッターエンジンを搭載して5ナンバー登録可能なボディサイズのE30型318iが大人気となり、「六本木カローラ」と呼ばれるほど、街で普通に見かける存在になりました。

質実剛健なメルセデス・ベンツに対し、スポーティなBMWは若々しいイメージを持っており、ベンツより活発なイメージを求める層に訴えるには最適だったのです。


こうして「小ベンツ」と「六本木カローラ」により、特別な人だけではなく、普通の庶民も当たり前に乗るようになった輸入車。

さらに個性を求める人たちによって、新たにヒットするブランドが登場するのでした…という話はまた次回。

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