C3は2009年に2代目にモデルチェンジしました。
「東京タワー」は2001年に出版された江國香織原作の小説を実写化した、2005年の恋愛映画です。
二組の人妻と若者の恋愛模様を、東京タワーがそっと見守っているかのような甘美な描写になっています。
黒木瞳と岡田准一、寺島しのぶと松本潤という美男美女なカップルのキャスティングも美しさに拍車をかけています。
「オトナの女性」の情感溢れる、真っ赤なシトロエンC3
この映画は、透(岡田准一)と詩史(黒木瞳)・耕二(松本潤)と喜美子(寺島しのぶ)という二組の年の差カップルの恋愛が同時進行で語られていきます。
シトロエンC3は喜美子(35歳)の愛車という設定で登場します。
2002年に登場した初代C3の5ドアモデルです。
車庫入れに手間取っていた喜美子が、ガードマンの耕二に助けを求めたところから二人の関係が始まります。
この赤いC3の中で二人は思いをぶつけ合い、愛情を深めていきます。
禁断の恋と分かりながらも彼らは逢瀬を重ね、ますます惹かれ合っていってしまうのです。
赤というボディカラーは、詩史(41歳)より年齢が若く直情的な女性として描かれている喜美子が放つ情感の象徴なのです。
そのルーツはフランス版ワーゲンにあり
C3は、シトロエンがBセグメント市場を狙って投入した車です。
日本で言えばトヨタ・ヴィッツやホンダ・フィットなどと同格のコンパクトカーにあたります。
C3の源流となっているのは、1948年に発表された2CVというモデルです。
小型大衆車として第二次大戦前から研究が始められ、ナチス・ドイツの侵攻を受けながらも開発が続けられました。
後にシトロエンの社長となるピエール・ブーランジェが提唱した基本コンセプトは以下のようになっていました。
・ 50kgのジャガイモ又は樽を載せて走れること
・ 60km/hで走行できること
・ ガソリン3リッターで100km以上走れること
・ 荒れた農道を走破できるだけでなく、カゴ一杯の生卵を載せて荒れた農道を走行しても、1つの卵も割ることなく走れるほど快適で乗り心地がよいこと
・ 車両重量300kg以下
・ もし必要とあれば、(自動車に詳しくない初心者の)主婦でも簡単に運転できること
・ スタイルは重要ではないja.wikipedia.org
ピンと来た方も多いでしょう。
CV2は以前ご紹介したドイツの国民車、フォルクスワーゲン・ビートルに近い思想の下で開発されていたのです。
デビュー時はその珍妙にも思えるスタイリングから失敗に終わると思われた2CV。
しかしブーランジェの目論見通り、合理的かつ高い信頼性を持っていた2CVは市場に受け入れられ、フランスを代表する大衆車となりました。
C3の独特な曲面で構成されたフォルムは2CV譲りのものなのです。
シトロエンの伝統=独創性と革新性
Vision(ビジョン)とDrive(ドライブ)を掛け合わせた「VISIODRIVE」というコンセプトの下で設計されたこのモデル。
「ゼニスフロントウィンドウ」と呼ばれる大きなフロントウィンドウは、雨天でも明るく良好な前方視界を実現するための革新的な技術です。
もちろん2CVから始まる乗り心地の良さやコストパフォーマンスの良さは受け継がれています。
日本ではあまり馴染みがないのが残念ですが、そのデザインはどんな場所にもフィットする独特な美しさを持っています。
コンパクトカーがほしい、でもちょっと差をつけたい…そんな方にぜひオススメしたい1台です。