国産エンジン史軽自動車・80年代第2次パワーウォーズ!前編

国産エンジンの歴史をさまざまなジャンル・角度から解説していくシリーズ、軽自動車編その4は、80年代に再燃した第2次軽自動車パワーウォーズ前編です。ターボ化が進む軽自動車の中で、最初に革命的なブレイクスルーを果たしたのは、ダイハツ ミラでした。

第1次パワーウォーズの反動

1967年3月のホンダ N360(31馬力)のデビューに始まり、1970年7月のダイハツ フェローMAX SS(40馬力)をピークとして、1976年のマツダ シャンテ(35馬力)の生産終了により、9年間におよぶ第1次軽自動車パワーウォーズは終わりました。

1972年のマスキー法を契機とした厳しい排ガス規制や、1973年の第1次オイルショックを景気とした低燃費化という二重の対策に追われるという意味では、軽自動車メーカーにも変わりは無かったのです。

それまでの空冷2サイクルエンジンにスポーツキャブレターを装着し、高回転で大量の燃料を燃やして爆発的な力を得る、という方法は通用しなくなり、急速に低回転からの実用的なトルクを確保し、パワーが減った分は水冷4サイクル化による静粛性が向上したジェントルなエンジンで商品力を確保するという、それまでと全く逆の作り方で軽自動車が作られるようになったのです。

さらに、1976年1月の規格改正による550ccまでの排気量拡大も、その傾向に拍車をかけました。

排ガス規制の緩い軽商用車(4ナンバー)ではまだしばらく2サイクルエンジンが残ったものの、「パパンパン、パン!」と2サイクルエンジン特有の賑やかな排気音を上げて走る軽自動車は、急速に姿を消していったのです。

水冷4サイクル・550cc・三菱ミニカターボの登場

さて、前述の通り550cc時代に突入してからも、かつてのようなハイパワー軽自動車は投入されませんでした。

上がった排気量は、ボディサイズ拡大で重くなったボディを引っ張るためのトルク確保に回されたのです。

それだけでなく、排ガス規制に適合した4サイクルエンジンの開発に遅れを取ったスズキが、トヨタの仲介でダイハツから一時期AB型エンジン(水冷4サイクル2気筒)を軽乗用車フロンテ用として供給を受けるという一幕もありました。

要するに1970年代後半から80年代初めにかけては、各社ともハイパワーエンジンどころではなかったのです。

そこにようやく風穴があいたのは1983年の事でした。

2月に三菱 ミニカと商用バンのミニカエコノが軽自動車として初めてG23BTターボエンジンを搭載してデビュー!

後にスズキ・カプチーノが登場するまで軽乗用車(ミニカ)としては唯一の、そして軽ホットハッチ(ミニカエコノ)としては現在に至るまで唯一の軽FRターボ車です。

ターボ車といってもわずか39馬力で360cc時代のピークにも達していなかったものの、5.5kgf・mという360ccNAエンジンよりありえなかった太いトルクで、軽自動車エンジンは新たな時代に突入したのでした。

ダイハツはミラターボで自らフェローMAXを超えた

三菱がミニカでターボ化の先陣を切ると、当時シビックに注力するため一時的に軽乗用車から撤退していたホンダ以外の各社が、競ってターボ車を投入しました。

ミニカターボがデビューした1983年のうちに、10月にはダイハツ ミラクオーレ(現在のミラ)が4サイクル2気筒のAB35ターボで41馬力に達し、それまでの軽最高出力・ダイハツ フェローMAX SSの40馬力を自ら突破。

11月には排ガス対策を整えたスズキが4サイクル3気筒のF5Aターボを搭載したセルボターボで40馬力。
12月にはスバルが4サイクル2気筒のEK23-Tターボを搭載したレックスコンビターボで41馬力と、立て続けに軽ターボがリリースされたのです。

この頃はターボエンジンだけでなく4WD(当時はまだ手動切り替え式のパートタイム4WD)の投入や、初代スズキ アルトを先駆けとして税制面で有利な軽乗用バン(ボンネットバン、略してボンバン)の登場、それに普通車並の各種安全装備や快適装備、内装などが進められ、「軽自動車」が「自動車」への道を歩み始めた時期でもあります。

1度火がつけば止まらない!ダイハツのハイパワー化で第2次軽自動車パワーウォーズ勃発!

さて、ターボエンジンの方は追従した各社に負けじと、軽ターボ第1号の三菱も1984年2月のミニカのモデルチェンジで軽自動車初のインタークーラー付ターボエンジン、新型G23BTを投入。

ミラターボやレックスコンビターボの41馬力を上回る42馬力を発揮してきました。

いよいよ各社がジリジリと僅かなパワー差を競い合う、かつてのパワーウォーズの様相を呈してきましたが、時は1980年代半ば。

いよいよ燃費・排出ガス対策にもメドがつき、あらゆる自動車で失ったパワーを取り戻す動きが広まりだした頃です。

軽自動車でも新技術をいきなり投入したブレークスルーモデルがいつ登場してもおかしくない中、ついに1985年8月、ダイハツが新型L70V型ミラに、これも新型の4サイクル3気筒インタークーラーつきターボエンジン、EB20を投入、50馬力のハイパワーと7.0kgf・mという大トルクは共に一気に大台へと乗せてきます。

この革命的なモデルをもって、ついに第2次軽自動車パワーウォーズが勃発したのでした。


いよいよ「普通車より速い軽自動車」が現実のものとなった第2次パワーウォーズ、次回は現在に至る軽自動車64馬力規制を作った、あのモデルを中心にご紹介します。

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