国産エンジン史ディーゼルその2・いすゞの挑戦は続く、乗用ディーゼルの復権

国産エンジンの歴史をさまざまなジャンルからお伝えしていくシリーズ、ディーゼル編。第2回は初のオリジナル乗用車「ベレル」で不評を買ったディーゼルエンジンでしたが、その後オイルショックを経ていちはやく乗用ディーゼルの復権を図ったいすゞの挑戦をご紹介します。


いすゞから乗用ディーゼルが消えた日

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いすゞが小型トラック「エルフ」で好評を得ていた2000ccディーゼルエンジン「DL200」を搭載した大型乗用セダン「ベレル」が不評で、1967年5月に生産終了する頃の末期には投げ売り状態となっていた事は前回紹介しました。

その間にも、乗用車用の1764ccディーゼルエンジンを小型セダンの「ベレット」やピックアップトラックの「ワスプ」に搭載して販売していたいすゞでしたが、ベレルの生産が終了した翌年、1968年5月のマイナーチェンジでベレットからディーゼルエンジンをカタログ落ちさせます。

これでいすゞの乗用車およびピックアップトラック「フローリアン(ベレル後継)」「ベレット(後にジェミニ)」「ワスプ(後にファスター)」の全てからディーゼルエンジン搭載モデルが消滅してしまいました。

いかにディーゼル機関の先駆者のひとつであるいすゞであっても、乗用車用ディーゼルはまだ時期尚早という事だったのかもしれません。

パワー競争の時代にディーゼルの居場所は無し

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ベレル無き後も日産のセドリック/グロリアなどでディーゼルエンジン搭載モデルは設定されていましたが、当時の市場ではどちらかといえばガソリンエンジンの進化とパワーアップに力が注がれました。

高度経済成長期の中で乗用車が急速に普及し、庶民の暮らしが豊かになっていく中で、少しでも大きく、少しでもハイパワーで、少しでも速いクルマを求め、エンジンは大排気量化、高回転化、高性能キャブレターの装着などに各メーカーしのぎを削っていったのです。

その中でロータリーエンジンが台頭していったように、当時はまだ燃費についてそれほど問題にされる時代では無く、軽油で駆動する経済性の高さが売りであるディーゼルエンジンは、乗用車用としてはあまりみられない存在だったのです。

それどころか、ガラガラうるさいばかりでパワーも無く、黒煙を撒き散らすディーゼルエンジンは「トラックのエンジン」として、蔑まれる存在だったとまで言えます。

オイルショックを経てディーゼル復権

しかし1973年、第一次オイルショックによってガソリン代が急騰し、それまでパワー競争をしていた各社の高性能エンジンは、マツダのロータリーエンジンを筆頭として一斉に息の根を止められます。

その高性能エンジンで争われていたレースからも撤退した各社はエンジンの高性能化と言ってもハイパワーではなく環境性能の向上、続けてそれを維持した上での実用性能の向上に開発力を向けざるを得なくなり、燃費の向上に力が注がれたのでした。

その中で生まれたのが、小さな排気量からでも大出力を生めるターボエンジン(そう、初期のターボエンジンは現在と同じように、燃費や排ガス対策として投入されました)であり、復権したのが、軽油で駆動して低回転大トルクで実用燃費も優れるディーゼルエンジンだったのです。

いすゞにディーゼルエンジン還る

一通りの排ガス対策を済ませた上で、いすゞの中型セダン「フローリアン」でいすゞ・ディーゼルが復活したのは1977年11月のことでした。

もっとも、フローリアン自体が当時デビューから10年目で、台所事情の苦しいいすゞが本格的モデルチェンジを行えない中でのテコ入れ、それもベレルの時と同様に小型トラック「エルフ」の1951ccディーゼルエンジンを転用したものでしたから、多分に間に合わせ的なモデルだった事は否めません。

それでも、他社同クラスのトヨタ・コロナマークIIや日産・ローレルに1~2年先んじてディーゼルエンジンを投入した事で市場からは好評をもって迎えられ。モデル末期ながら一時的にフローリアンの販売台数回復に貢献します。

続けて1979年にはスペシャルティクーペの名作「117クーペ」にピックアップトラック「ファスター」用の2230ccディーゼルエンジンを、小型セダンの初代「ジェミニ」に1800ccディーゼルエンジンを搭載しました。

特に「ジェミニ」へのディーゼルエンジン搭載は大成功で、1980年にはディーゼルエンジン搭載乗用車の販売台数日本一となって、80年代を通し「乗用車用ディーゼルのいすゞ」の名を轟かせることになったのでした。


次回は、ターボ化や電子制御燃料噴射などの新技術導入で実用性向上を図った、1970年代末期から1980年代の「経済性だけではない時代のディーゼルエンジン」を、各社の代表的なエンジンから紹介します。

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