車のハンドルになぜイノベーションが起きないの?ハンドルの形状はずっと同じまま…

自動車のハンドルは登場してからというもの、基本的な構造や形は変わらず現在まで受け継がれています。そんな自動車のハンドルにはなぜ、イノベーションが起きず変化することがないのでしょうか。また、ハンドルの形状は自動車以前の乗り物から見られる形状であり、どのような分野が発祥なのでしょうか。

自動車のハンドルの歴史

世界初のピストンを使用した自動車は1769年に開発されたキュニョーの砲車だと言われています。このキュニョーの砲車は蒸気を使用した自動車で軍で使用される大砲を運搬するために作られており、車体の重量は重く大きな車体で速度は10km/h以下と言われています。キュニョーの砲車のハンドルは現在の自転車のハンドルのようなものを操作します。当時、走行実験中にハンドルの操作ミスで事故を起こしてしまい、自動車史で初めて事故を起こした自動車と言われています。

ティラーバーの普及

黎明期の自動車は馬力が少なく、速度があまりでないためティラーバーと呼ばれる棒状のハンドルが使用されていました。しかし、技術の進歩により高性能化し部品量の増加などで重量が増加した自動車を前に、ティラーバーでの操作は難しくなり緻密な操作を可能とするステアリングホイールが採用されるようになりました。

ステアリングホイールの歴史

ステアリングホイールは現在の自動車の全てにと言っても過言ではないほど普及しているポピュラーな規格です。自動車が普及する前にも船の舵など様々な乗り物で似た形状のものが見られていました。自動車の分野でのステアリングホイールは1984年に行われたパリ ルーアン・トライアルで使用されていたこともあり、20世紀に入る頃には多くの自動車がステアリングホイールの規格を採用していました。

過去に起こったステアリングホイールの課題

ステアリングホイールの課題は内輪差とステアの重さにありました。自動車が旋回する際に内側の前輪と外側の前輪の移動する距離は違います。したがって、同じ切れ角にしてしまうとスムーズにコーナリングができません。そのため、タイヤの切れ角に差をつけるための精密な構造が必要でした。また、ステアリングの重さも重要です。それまでのステアリングは自動車を旋回させるのに必要な力が多く、スムーズなハンドル操作を求められる場合の対応が困難でした。しかし、パワーステアリングのおかげで運転手がハンドルを切る際にモーターで補助することでスムーズな旋回が可能となりました。

ステアリングが変化するのが先か、ステアリングが無くなるのが先か。

現在までにレバーからステアリングホイールに変化してきた自動車のハンドルですが、無くなる可能性があります。現在自動車メーカーやIT企業の中で注目されている技術の一つ、自動運転がステアリングの進化に終止符を打つ可能性が出てきました。自動運転技術には5つのレベルが存在し、レベル4までは操作するための入力デバイスが用意されていますがレベル5自動運転ではハンドルが完全に排除されます。そのため近い将来自動車からステアリングが消える可能性が考えられます。現在、茨城県境町で行われている自動運転の無料バスではMicrosoftが販売しているXBOXのコントローラーが搭載されており、緊急時にはステアリングの代わりにコントローラーでバスを操作します。この様にハンドルが無くなる未来はすぐそこまで来ているのかもしれません。