ハンドルを回してもタイヤが動かない!?ステリングロアシャフトが原因の故障について【ベテラン整備士が教えます】

ステリングロアシャフトとは?

ステアリングロアシャフトとは、ステアリングホイールの回転をステアリングギヤボックスに伝える役割があるシャフトでとても重要なパーツです。ハンドルの駆動を伝えるギヤボックスと繋げているものなので、このパーツが異常をきたすとハンドル操作が思うようにいかなくなり、大変危険です。

ロアシャフトが原因の故障、実際の修理方法

今回はハンドルの操作が不能になってしまう原因となる、ロアシャフトの故障についてご紹介していきます。

ハンドルの操作が不能になってしまったお車が入庫しました。
ハンドルを回してもタイヤが連動しない状態です。前輪駆動車なので前輪をガレージジャッキで浮かせながら移動してリフトに乗せました。
点検してみると前進しタイヤが回転しないわけではない様です。ハンドルからの伝達が途切れているようでこのまま走行するのはとても危険です。
タイヤは運転手がハンドルを回すと同じ方向に動きます。ハンドルをステアリングホイールと言い、ステアリングホイールからステアリングシャフトと言うハンドルの下に伸びている棒状の物がステアリングギアボックスに伝達させます。


ハンドルの下には色々な部品がついているステアリングコラムがあり、ウィンカーレバーやキー、パワーステアリングモーターなどがあります。
同じ様にタイロットという棒状のシャフトがタイヤに接続されているナックルアームと連動してステアリングホイールの回転をタイヤに伝達しています。

ステアリングギアボックスではステアリングホイールから伝わった回転をタイロットを左右に動かす事でタイヤの向きを変えています。一般車にはラックピニオン式が使用されていてステアリングシャフト先端がピニオンギアになっており、横方向のラックギアとクロスするように接続されて左右の動きに変換されています。難しく聞こえますが構造としてはとても簡単なのでステアリングの切れがシャープになります。大型車などにはボールナット式が使われていますが現在の普通車にはラックピニオン式が採用されています。

ハンドルとタイヤの関係性はこの様な仕組みになっていますが、今回はその伝達がなされていないのでこのうちのどこかが繋がっていないと言う事になります。ハンドルを動かしたりタイヤを動かして、伝達の有無を点検していくとコラムシャフトがステアリングギアボックスと繋がるジョイントと連動していないようで、シャフトが完全にずれた状態ではまっていました。それぞれのボルトは緩んでいる様子もなく、なにか違う整備をした際にきちんと咬まない状態でボルトを締めてだんだんとずれて抜けてきたと言う様な状態でした。

ずれて咬んでしまったシャフトはなかなか抜けなくてとても苦労しましたが、もしもDIYで作業をしたのならばとても危険な故障に繋がってしまったのでステアリング類を整備するのは整備工場にお願いしましょう。

珍しい故障だったので単品で部品が出ませんでした。中古品でステアリングコラム本体を購入して必要な部品だけを移植しました。
ついでにスパイラルケーブルも交換してほしいとご依頼があったので交換しました。

スパイラルケーブルとはハンドルの回転軸に設置されている渦巻き状の部品です。エアバックやホーンの電力を伝える部品です。エアバックやホーンはハンドルと共に回転するのでそれぞれの配線が回転で引っ張られてちぎれない様に代わりに回転して伸びてくれるものです。ケーブルがクルクルときれいに収納されて居る様な感じです。伸縮にも限界があるのでしっかりと中心を測って動かさない様に取り付けなければならないのでご自身で整備するのはお勧めしません。謝った設置をするとケーブルが切れてしまい警告灯が点灯し、もしもの際にエアバックやホーンが作動しないという事故が起こります。

もちろん自分で点検や交換など気軽にできる部品も車には沢山あります。そして、有資格者でないと作業できない部品も沢山あります。お車の不調が気になる場合はご自身で作業しても良いのか慎重に調べたり、整備工場でアドバイスを貰ったりしてから作業する事をお勧めします。

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