国産エンジン史エコカーその12・FCVに賭けたMIRAI – Ancar Channel【アンカーチャンネル】

国産初の量産FCV、MIRAIの登場

2014年12月、国産車で初のFCV(燃料電池車)トヨタ MIRAIの販売が開始されました。
「世界初の量産FCV」の座こそ韓国のヒュンダイ ツーソンFuel Cell(2013年2月生産開始)に奪われたものの、国産車としてはホンダに先んじて日本初です。
現行プリウスから採用されたトヨタの新設計アーキテクチャ「TNGA」以前の旧世代モデルではありますが、これでトヨタも世界初のHV(ハイブリッド車)プリウスの時と同様、最先端の環境対策車メーカーとしての道を歩み続けることとなりました。

そもそもFCVとは?

そのFCVですが、水素を燃料として発電し、走行時にCO2(二酸化炭素)や有害物質を排出しない燃料電池を使って走るEV(電気自動車)の一種です。
燃料電池の他に、通常のバッテリー(ニッケル水素やリチウムイオン電池)、あるいはキャパシタと呼ばれる蓄電器も搭載しているため、エンジンの代わりに燃料電池を搭載したHVの一種とも言え、トヨタではMIRAI以前に試験的にリース販売をしていたFCVを「FCHV」と呼んでいました。
水素を燃料として駆動するエンジン、また同様に水素を燃料として発電する燃料電池も19世紀には既に発明されていましたが、その実用化には時間がかかりました。
まず燃料電池が空気の無い宇宙空間で利用するため1960年代から採用され、同時期に世界初のFCVが米GMによって開発されています。
水素エンジンも精力的に開発されるものの、熱効率が悪くガソリンエンジンやディーゼルエンジンの代替には向かないので、現在はガソリンまたは軽油でも水素でも動く「バイフューエル」方式の方が盛んです。
結局、現在では水素から電気を取り出しモーターを回すFCVが主流になっているのでした。

トヨタ MIRAIまでの道のり

MIRAI以前のトヨタFCVは、1996年に開発された「FCHV」をその始祖としています。
最初は普通に水素タンクに水素を、あるいは水素を作る改質器を搭載してメタノールを燃料としていました。
開発が進むに従い、水素吸着合金を作って水素を安全に搭載したり、高圧水素タンクに圧縮した水素を搭載、あるいは液体水素を搭載して改質器で水素を取り出す、など試行錯誤を重ねています。
結局最初に実用化される事になったのは圧縮水素を搭載する方式で、クロスオーバーSUVのクルーガーをベースとしたトヨタ FCHVを2002年にリース販売開始。
実験的に運用しながら水素をより圧縮して大量に搭載した「FCVアドバンスド」に発展、航続距離を伸ばしていきました。
2010年前後には三菱がi-MiEVで、日産がリーフでEV(電気自動車)を実用化して市販開始し、トヨタもプリウスにEVとしての能力を高めたPHV(プラグインハイブリッド)の市販を開始、エコカーとしての当面の本命はEVとPHVになるかに見えます。
しかし、急速充電でも最低20分程度の充電時間がかかるEVに対し、トヨタはPHVや超小型モビリティ以上の実用化を行わず、次世代エコカーの大本命としてFCVの実用化に踏み切ったのでした。

登場したMIRAIはどんなクルマか

こうして2014年12月、ついにFCV「MIRAI」は誕生しました。
高圧水素タンクは容量的にかなりかさばるため後部の荷室容積を圧迫し、後席も2人がけの4人乗りにとどまったほか、フロントシート床下に足を入れられないなど、ゆとりがありません。
クルマとしてはプリウスより全長・全幅とも一回り大きいカムリクラスのFF車で、それをもってしても荷室や定員が限られるところに巨大な水素タンクを必要とするFCVの限界が見えてしまっていますが、それだけに一般的なEVをはるかに上回る最大650kmの航続距離を達成しました。
外観は現行プリウス、それもプラグインハイブリッドのプリウスPHV(海外名称はプリウス・プライム)と似ていますが、大柄な分だけ空気抵抗は若干大きめ。
内装はタッチパネルを多用しているものの、特に現代の自動車と大きな違いはありません。
問題はリアサスにトーションビームを使った事による乗り心地で、安価で軽量なコンパクトカーであればともかく、重量級のクルマには不向きな足回り形式のため、良好とは言いがたし。
あくまで「古い革袋に新しい酒を入れた」という、間に合わせ的なクルマと言えます。
ホンダに先んじてFCVをリリースするため、本来より早いデビューを迫られたしわ寄せが来ているかもしれません。

MIRAIとFCVの課題

MIRAIは当初の年間生産台数が約700台、その後段階的に生産を増やしていく予定ですが、バッテリーの生産能力がネックとなるEV同様、FCVも燃料電池セルの生産能力に左右されます。
トヨタと提携しているBMWにも燃料電池セルを供給している以上、急速な増産とそれによるコストダウンは当面難しそうです。
そして何より、水素を補給するための水素ステーションの整備が進んでおらず、それもどこでも24時間フル稼働とはいきません。
現実的には東京・名古屋・大阪間の移動を除けば、全国各地に点在するステーションを中心に、その周りをちょっと走れる程度というのが実情です。
水素ステーションの普及状況に関する記事は、こちらからご覧いただけます。
そんな事からトヨタも次の実用FCVは次期レクサスLSなど大型高級セダンによる、官公庁の公用車や大企業向けと考えているようで、一般向けFCVと呼べるクルマの登場には時間がかかるでしょう。
実際にFCVの普及や水素を補給するインフラ整備にこの先数十年かかる事を考えると、EVに熱心な日産や三菱を除けば、トヨタはホンダは当面、EVとしての能力を高めたPHVをエコカーの主力とせざるをえません。
ある日突然「実はEVも作っていました!」と発表しない限り、FCVとPHVに注力しているトヨタのエコカー戦略は、大きな賭けと言えます。
数十年後、トヨタはどうなっているでしょうか?その答えはまだ誰にもわかりません。


まだまだ海のものとも山のものともつかず、燃料である水素の供給体制も整っていない中、見切り発車のようにスタートしたFCVですが、今後どうなっていくでしょうか。
次回はこのシリーズ最終回として、「今後登場するのか。未来の自動車用パワーユニット」をご紹介します。
国産エンジン史エコカーその13最終回・今後登場するのか・未来の自動車用パワーユニット

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